生活の道具 デザイン・製作・修理

Designing and Making Furniture

Hinoki Kitchen stool
- dorayaki-stool -

キッチンなどの狭い場所で使うためのスツール。
座面の周りに巻いた革ヒモは、持ち運びのときの持ち手や壁に掛けるためのフックにもなります。
座面とフレームの間に、革の帯をはさむことでアクセントになると同時に、メビウスの輪のような形状に延長して持ち手部分を追加することで、機能も追加しました。また、スツールはとかく倒れやすいですが、革ヒモのバンパーがあることで、倒れたときのショックも吸収します。


フレームはヒノキ、座面は鹿革

このスツールの主要な素材は、ヒノキと鹿革です。ともに、日本では古くから使われてきた素材ですが、 現在、様々な問題を抱えています。ヒノキは日本と台湾にのみ自生する針葉樹です。日本では古くから建 築材などに使われてきましたが、その柔らかさ故、家具にはあまり使われてきませんでした。戦後、木材 需要の拡大を見越した拡大増材政策で、広葉樹からなる天然林を伐採し、成長が早いとされたスギ/ヒノ キが植樹されてきました。しかし、日本の急峻で険しい地形の森林地帯から産出される木材は生産コスト が高くなるため、外国からの安価な材木に需要を奪われ、産業としての林業には厳しい環境が続き、林業 労働者の減少から森林の荒廃が加速しています。

スギ・ヒノキなどの針葉樹を植林した若い造林地では、鹿の食害も問題になっています。植林された森 は、初期の段階では、鹿の餌になる低木林や草原となるため、豊富な餌を鹿に供給し続ける環境となりま す。それが、鹿が増加した大きな原因と言われています。また、鹿にとっての天敵であるオオカミが絶滅 したのも見逃せません。針葉樹の植林地が成長し木が大きくなると、林の中には光が届かなくなり下草が なくなります。鹿にとっては食料がなくなることを意味します。そのため、鹿は食料を求めて別の若い植 林地に移動したり、人里近くにまで降りてきます。また、針葉樹の植林の増加に伴いブナ・ナラなどの広 葉樹が減少し、ドングリなど木の実を食べる野生動物の食料が森林から減ったため、食料を求めて里に降 りてくるクマやサル・イノシシなどの野生動物の農産物への被害も増えています。
現在、鹿は害獣として駆除されています。肉はジビエ料理として有効利用されることもありますが、廃 棄物として埋設/焼却処分されている場合が多く、尊く貴重な資源が有効に活用されることなく処分され ていることはとても残念です。

広葉樹の豊かな森林は、水源涵養林として河川の流量を調節し、水資源の確保や水害の防止に役立ちま す。そのうえ、落ち葉が堆積し微生物などによって分解された腐葉土層を通って地中にしみこみ、川とな って海に注ぐ水には豊富な窒素やミネラルが含まれます。牡蠣などの餌となる植物プランクトンは、その 陸上から供給される栄養分によって増殖します。豊かな森林は、そこに生息する動物ばかりでなく、豊か な海をも作り出すわけです。
人間の勝手な活動によって増減する木材や野生動物などは、人間にとっては貴重な資源です。その、貴 重な資源を少しでも有効に活用するきっかけを作ることが重要であるとの考えから、このスツールはデザ インされました。

木部や革の傷や色むらは、天然素材である証でもあります。座面の鹿革は、害獣駆除された鹿の革です。 野生で育った鹿には、野山で活発に活動していた時についた傷が数多くあります。資源を有効に利用する という観点から、そのような傷がそのまま表れても、強度に問題がないと判断した傷は、そのまま製品に 使っています。

高岡クラフトコンペティション2015 ファクトリークラフト グランプリ受賞

ウッドデザイン賞 2015 受賞



座面:直径240mm
高さ:600mm
主要材料:ヒノキ/鹿革/牛革/ウレタンフォーム etc


Design 2015















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